Year: 2022
Medium: oil under chromed canvas with patina
Dimensions: 228.6 x 162.6 cm (90 x 64 in.)
Acquired from KOTARO NUKAGA, 2022
鏡のような金属的な画面が印象的な、ホッドの代表作とされる「The Life We Left Bhind」。制作はかなり複雑な工程を辿る。油彩で彩られた画面の上にクロームの被膜を作る。メッキのように表層を覆ったクロームに対して、今度は酸やアンモニアを用いた化学反応によって劣化させ、剥離していく。鈍い鏡のように像と光を緩やかに照らし返すクローム層、そこに酸化によって生じた錆のような翳りが宿り、それらは色彩とは異なる光と影による描画として油彩の層との不思議なコントラストを作り出している。本作の前に立つ人は自ずとそこに陽炎のように映し出される自らの姿を認めることになる。ガラス鏡は自らの姿形という表層を映し出す。ホッドの作品はそうした明瞭な姿見ではない代わりに、より内面の深部に向かって視線を投げ返してくるものである。ホッドの鏡は人の内面に訴求する。本作のタイトルが「The Life We Left Behind」(私たちが後に残してきた人生)と付けられている通り、他者には窺い知ることのできない己だけが知る自らの過去、ひいては未来への思考を促す。
