くぼみに眠るそら-寝虎- / valley of sleeping sky -prone tiger-
Year: 2022
Medium: naphthalene, mixed media (cast from Tozan Kiln's plaster mold)
Dimensions: 28 x 40 x 30 cm (11 x 15 3/4 x 11 7/8 in.)
Acquired from Mizuma Art Gallery, 2022
宮永の京都の実家は、北大路魯山人らの数多くの陶芸家たちがそこで作品を焼いたことで知られる「宮永東山窯」である。その東山窯で実際に使われていた陶彫用の型を、宮永が再利用し制作されたものが、個展「くぼみに眠る海」(2022年, Mizuma Art Gallery, 東京)において発表された本作を含む一連の作品群であった。型の内側には当然のことながら空間がある。その空間は本来は陶土を象るためのものであるが、宮永が改めて目を向けるまでの長い年月ただ忘却されてきた。宮永はナフタリンという容易に姿形を失う物質によって彫刻作品を制作している。その宮永だからこそ、放置され続けて古びた型の中に澱のように眠り続けていた陶彫の影を見たに違いない。「くぼみ」は型の内側を指すだろう。「くぼみに眠るそら」なのだから、ナフタリンによって具体化されたものとは、単にかつての陶彫の姿だけではなく、そこに眠り続けていた「不在」そのものだ。虎が臥した様子を見せているそれは、昇華が徐々に進めばいずれは霧散して消えていくだろう。しかし、ガラスケース内に封じられている限り、かつて虎であったものは再び眠りについて常にそこに存在し続けるのである。