AIKO MIYANAGA
宮永愛子
1974京都府生まれ。1999年、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)芸術学部美術科彫刻コース卒業の後、2008年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程を修了。ナフタリンの結晶を用いた彫刻作品を制作している。極めて昇華しやすい性質を持つナフタリンで彫刻を制作するということは、常に消失との戦いとなる。宮永の作品はガラスケースに密封されていたり、樹脂でその物を完全に覆われていたりするが、それでも一度その内部環境に空気が入り、かつ気温の影響が及べば瞬く間に昇華の反応が始まって崩壊が始まる。しかしながら、鑑賞者のそういう不安を横目に宮永はその個体としての彫刻が失われることにそもそも悲観的な感情を持っていない。なぜなら、ナフタリンは昇華しやすい性質と同時に、結晶しやすい性質も併せ持ち、一度気体に変化した後も再び容器の中で再結晶し、別の形への姿を転じながらも作品(であったもの)は存在し続けるからである。この宮永作品の存在のありようは、人の肉体と精神の関係、時間と空間の関係、流転する物質の本質など、多くことについての示唆を与える。永劫不滅の物質などこの世には存在しないのである。主な美術館個展に2019年「宮永愛子:漕法」(高松市美術館)、2017年「宮永愛子 みちかけの透き間」(大原美術館有隣荘, 岡山)、2012年「宮永愛子:なかそら-空中空-」(国立国際美術館, 大阪)などがある。また、2006年にはアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)の助成により渡米、翌2007年には文化庁新進芸術家海外留学制度(平成18年度)により渡英。2020年「第 70 回芸術選奨」文部科学大臣新人賞、2013年「日産アートアワード」グランプリ、2011年「第22回五島記念文化賞」美術部門新人賞などを受賞。国際展、国内外のグループショーなど多数。