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アニエス
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Year: 2013
Medium: oil on canvas
Dimensions: 227.5 x 182 cm (89 1/2 x 71 5/8 in.)
Acquired from ShugoArts, 2022
柔らかく靡く髪の表現に目を奪われる。髪と生地を掴む複数の手、そして一際冷たい質感で異彩を放つ大きな裁ち鋏。「生きること」を主題として描く作家として知られる近藤だが、本作においては髪という人体の中でも目に見えて変化が著しい部位を、生命の象徴として扱っているように思われる。生きるということは常に変化を強いられることでもある。誕生から死に至るまでの時間と共に、老いや病、子供から大人へ成長、否応なしに心身ともに変化を止めることがない。布地は糸から編まれるが、繊維を髪(生命)の比喩だと仮定すると、それを掴む手やそこに重ねられた鋏、そして針と糸の意味が全て死と生に結びついて見えてくる。布を掴む二つの手は、互いの人差し指を絡め合わせているが、一方の指は青い。豊かな髪を誇らしげに、逞しい手で頬付きをする女性の顔はどこか蒼白に見え、首元は白い百合の花弁のようだ。両義的な描写によって、命が力強さと同時に危うげな脆さを合わせ持っていることを示唆するようである。本作は2018年に府中市美術館で開催された「絵画の行方」にて展示された。