-
KOALA 6
-
Year: 2020
Medium: oil on canvas
Dimensions: 24.2 x 33.3 cm (9 1/2 x 13 1/8 in.)
Acquired from a private collection, 2022
今井には繰り返し描かれる気に入ったモチーフがいくつかあり、「トースト」、「アボカド」、「Gathering」、など、いくつかのシリーズ作品が見られる。「コアラ」もそうした繰り返し描かれているモチーフで、毎回同じ特定のぬいぐるみを描いていると思われる。両手両足の爪の部分がマジックテープになっており棒などに抱きつかせることができる、玩具として非常にありふれたものだ。画家が描く題材としてはあまりに日常的過ぎて、特別な感情を抱きにくいものであるようには思えない。しかしながら、難聴を抱える今井にとっては目で世界を知ることが認知の大半を占めており、おそらくは人一倍見ることによってより多くの情報を得ている。何の変哲もないぬいぐるみ、しかもとぼけたような表情のコアラがこちらを向いているだけのシチュエーションから、今井はどのような気配を読み取り、何に心を動かされたのだろうかと想像を掻き立てられる。光の加減だろうか、大きく見開いた左目のすぐ隣には濃い影が落ちて、ふいに驚いたような、やや強張った表情にも見えてくる。言語では表しようのない何らかの感情の宿った強い眼差しをこの絵に描かれたぬいぐるみの瞳に感じるのは気のせいではないだろう。