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牙 / The fang
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Year: 2022
Medium: oil on canvas
Dimensions: 73.3 x 91.1 cm (28 7/8 x 35 7/8 in.)
Acquired from Mizuma Art Gallery, 2022
江口の作品に頻繁に登場するクマと耳付きのキノコたちが描かれている。ぬいぐるみのような生き物たちが仲睦まじく遊んでいるかと思いきや、タイトルは「牙」と何やら鋭い語感が与えられている。良く見てみると、画面中央で向き合っている両者の口元にはジグザグと尖った歯が並んでいる。口を大きく開けているから、それが穏やかでない雰囲気であることはわかる。対峙する両者が牙を剥き出しにしていることに気づけば、この優しげな世界が急に緊張感のある絵に見えてくる。ふわふわ質感のように見えていたマチェールも、一点強張って見えてくるだろう。塗りを重ねた背景は表層に白っぽいグレージングが施されており、その裏には有機的な線描やキノコのようなものがいくつか描いてある。そのまま視線を絵画の端まで動かしていくと、作品のサイドには白が重ねられていないため、本来の発色が垣間見える。薄塗りの白はの彼らの(私たちのでもある)秘めたる暴力性を覆い隠す役割も果たしているように思われる。死と生の両義性の絵画。