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Schlosswand
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Year: 2019
Medium: oil, egg tempera on paper, mounted on aluminum
Dimensions: 28 x 20 cm (3 1/8 x 7 7/8 in.)
Acquired from 104GALERIE, 2022
下地となるテンペラによって細かな波状の模様を描き込んである。白地に暗褐色の波形をヘラやスキージーのような道具で描いているように思われる。それによって色彩のレイヤーというだけではなく、波状に奥行きが続いていくような空間性が生じている。さらに、その波形を全くもって否定するかのように大胆かつ冷徹な格子模様をその上に重ねている。これもおそらくニードルかペインティングナイフのようなもので絵具の表層をこそぎ取るようにして描きこんでいる。このような、画面を引っ掻いたり、絵具を引き伸ばした痕跡を扱う手法はFox作品の大きな特徴であり、その特徴を際立たせるために本作の様なアルミ板にマウントした支持体を使用したり、ガラス面を利用したりと、硬質な画面であればあるほどその特徴は出やすい。そして、画面全体の色調を支配しているのは表層に重ねられた(おそらく)油彩による濃い青である。下層にある構成的で、冷静な画面作りとは一転して、濃度の濃い絵具を強く擦り付けたようなエネルギーとムーブメントが画面に加えられ、画面上で相反する要素が拮抗している。しかしながら青という寒色がその情動を程良く抑え込んで、画面構成が破綻するのを防いでいる。小作品ながら、Foxの特徴を非常に多く示す良作である。