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water mirror, 17, WM-741
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Year: 2018
Medium: chromogenic print
Dimensions: 120 x 150 cm (47 1/4 x 59 in.)
Edition: No.1 of 5
Acquired from Taka Ishii Gallery, 2022
滑らかな緑色の湖面を光ごと掬い上げたかのような本作は、タイトルにある通り「水鏡 (water mirror)」である。大判のフィルム写真で撮られた「水鏡」シリーズは、水面の木々と実際の森をそのフィルムの濃密な情報量によって精細に捉えているが、写真のプリントとして提示されるそれは実際にその場所において鈴木が見た景色とは異なっているはずである。カメラという光学的装置を通して捉えた風景は必ずしも人間の目と重なるわけではない。レンズの倍率に応じた視野において、任意のエリアにフォーカスを据えて、露出を計算して適したスピードでシャッターを下ろす。そうして収められた光景は、現像というプロセスを経て初めて作家の目と交わる。必ずしも目で見たものと同じではない、しかし、カメラという人とは異なる位相から眼差した確かにその場所に存在した風景がそこに現れる。鈴木の「水鏡」シリーズはそのような世界の捉え方をしている。鈴木の写真は、手で触れ目で見たものの確からしい実感によってそれをすっかり真実であると信じ込んでいる我々を、その欺瞞から解放するのである。ナルキッソスの逸話にあるように、水鏡は自分ならざる視点の始まりである。水面に映る景色を見る時、私たちはこの世界が現実かつ虚像であるというパラドクスに遭遇するのであり、自らのものではない未知の視界を開くのである。そしてそれがなお美しいものであると信じても良いのだと、鈴木の「水鏡」は促している。2022年アーティゾン美術館開催の「写真と絵画 - セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」に出品。