Flowers and Fruits, after Pierre Auguste Renoir (Series from Pictures of Magazines 2)
Year: 2013
Medium: digital C-print
Dimensions: 123.4 x 101.6 cm (39 3/8 x 4 x 11 7/8 in.)
Acquired from nca | nichido contemporary art, 2022
「Pictures of Magazines」は雑誌の紙片によるコラージュ作品を写真に収めたシリーズである。絵画史上のマスター・ピースをモチーフとして、それらの色彩やタッチの特徴を見事に再現して見せている。本作では、ルノワールの1889年制作の静物画を取り上げている。ルノワールは静物画も多く制作しているが、本作では優美な陶の青い花器に燃えるように赤い(おそらくはグラジオラス)花が活けられている。瑞々しい果実が白いクロスに配されて、落ち着いた緑の背景にはやや印象派的な筆触が見られる。1880年代以降のルノワールは印象派的表現から離れ始めて新古典主義的な作風へと移行していった時代である。本作では、最晩年の独自の画風へと至るまでの過渡期にあたる作品をあえて題材に選んだのかもしれない。ルノワールの独特の霞がかったような筆致でもなく、印象派風の色彩表現でもない、この時期の絵画の微妙なタッチが、コラージュによって非常に上手く捉えられている。近接して見ると、作品全体の雰囲気からは全く思いもよらない写真素材を駆使したユーモラスなコラージュの手つきに、ムニーズらしい悪戯めいた完成が強く感じられる。