-
Wooden Wood 12
-
Year: 2022
Medium: wood, acrylic paint
Dimensions: 100 x 10 x 30 cm (39 3/8 x 4 x 11 7/8 in.)
Acquired from KOTARO NUKAGA, 2022
絵画を制作の中心としている作家だが、セラミック作品の制作やインスタレーション的な展示構成を試みるなど、空間的な造形にもその才能を発揮している。本作は木彫によって「彼」を象っている。荒く削り出された木肌は平子の絵画の筆触をそのまま引き継いでいる。数冊重ねられた本、その上に直立不動の「彼」が佇んでおり、黄色と青の衣服と頭部の緑が鮮やかな印象を与える。「彼」は平子にとって絵画の中で様々な寓意や象徴を表す。平子の作品では、植物と人工物、自然と文明、認識と無意識など、様々な対立構造を相対性の中に置く。世界の神話の多くには、二面性を同時に持つトリックスターが登場する。時には英雄として、時にはトラブルメーカーとして気ままに振る舞う。それは人間や人間社会の多面性を極端な形に置き換えた存在であり、同時に、ままならない自然の猛威や恩恵を象徴する存在でもある。それと同じく、決して傍若無人な振る舞いこそしないながらも平子の「彼」は、平子の目に写る世界の多様性、ひいては平子自身が抱える多面性、そして平子作品を眼にする私たちの中にある多義性を写す鏡として存在しているだろう。直立不動で表情のない無感情な「彼」の佇まいは、だからこそ、誰一人として同じではない私たちの全てを写すために開かれている。