JR
ジェイアール
ジェイアール
1983年パリ(FR)生まれ。常にサングラスをかけ、素性の多くは依然秘匿されている。ストリート・アーティストとして活動を始め、路上で拾ったカメラで自分を含むストリートの仲間たちの活動を収めては彼らのグラフィティと組み合わせてゲリラ的に街中に貼り出し、次第に人々の目に留まるようになっていった。自らの活動の原点が疎外された環境にあったことが現在に至るまでJRの制作動機を貧困や格差、人種問題や紛争などの社会的軋轢に向けさせている。また、市民参加型のプロジェクトとして現在も継続されている「Inside Out」シリーズでは、プロジェクト参加者のポートレートが巨大なポスターに印刷され、参加者が各々街中に掲示していくものだ。こうした抑圧された小さき声の代弁者としての活動が市民からの大きな支持を得たという確たる事実を受けて、今や美術館や公のプロジェクトが絶えない。近年では「JR: Chronicle」という回顧展がサーチギャラリー(ロンドン, 2020年)とブルックリン美術館(NY, 2018年)で開催された他、ルーブル美術館のガラスのピラミッドや、エジプトのギザのピラミッドを錯視的に改変してしまうなど、写真を使ったコラージュによって街や空間に対して視覚的に介入していく大規模なプロジェクトを継続している。
-
Title: Ballet, Sur les Toits du Louvre #2, Vertical, Paper Block, Paris, France
Year: 2021
Medium: color print, synthetic plaster
Dimensions: 55 x 40 x 8 cm (21 5/8 x 15 3/4 x 3 1/8 in.) -
Title: JR at the Louvre, La Pyramide, close-up South West angle
Year: 2019
Medium: color photograph, matte plexiglass, aluminum, wood (face mounted)
Dimensions: 100 x 100 cm (39 3/8 x 39 3/8 in.)
-
Ballet, Sur les Toits du Louvre #2, Vertical, Paper Block, Paris, France
-
Year: 2021JRはCOVID-19の影響でパリが都市封鎖されている最中も様々なプロジェクトを街中で実行していた。本作はルーブル美術館のルーフトップに佇むバレエ・ダンサーを写した写真をベースとしている。JRは2014年からバレエ・ダンサーとのコラボレーション・プロジェクトを続けている。このシリーズは夢想のような情景の優美さだけではなく、現実の行為を記したドキュメントであることに目を向ける必要がある。特に本作の作られた2021年は都市封鎖に合わせてルーブルをはじめとするパリ市内の美術館は実に7ヶ月もの間門扉を閉ざしていた。人々の雑踏が消え、芸術の街から芸術が閉ざされた異様さの中にあって、空と地上の境目にふわりと佇むバレエ・ダンサーの姿は地上の重苦しさなど消え失せてしまったかのような軽やかさがある。もう一点、本作において特筆すべきは、小さく折りたたんだ紙を開いて折り目が伸び切らないままのようなぎこちない造形にある。JRはペーパー・ブロックと呼称しているようだが、この不思議な造形に正面から相対すると、今にもひらひらと風に乗って中空へ舞い上がってしまうのではないかと想像させる。しかし、ひとたび作品の横に回り込めば分かる通り化学石膏の分厚い塊(まさにブロック)である本作は、その印象を大きく裏切って恐ろしい重さを見た目の軽さの裏に隠している。
Medium: color print, synthetic plaster
Dimensions: 55 x 40 x 8 cm (21 5/8 x 15 3/4 x 3 1/8 in.)
Acquired from PERROTIN, 2022
展示会履歴
-
- 2022年 Art Collaboration Kyoto
https://a-c-k.jp/
- 2022年 Art Collaboration Kyoto
-
JR at the Louvre, La Pyramide, close-up South West angle
-
Year: 2019街中で写真を使った大胆な仕掛けを実践するアーティストとして知られるJR。本作の舞台はパリのルーブル美術館である。ルーブルの中庭には、美術館へのメインエントランスでもあるガラス製の大きなピラミッドが設置されている。本作はその一角を写真に収めたものであるはずが、肝心のガラスのピラミッドはまるで姿を消してしまっており、代わりに建物の壁が45度にモノトーンに塗り替えられてしまったような不思議な光景の写真となっている。JRは本作において、綿密な計算のもと、ピラミッドの表面にその背景に重なる建物の壁面や道路の画像を実物大サイズで貼り付け、ある角度から見ると完全にそれは風景と合致し、結果としてピラミッドの姿は掻き消えることになるのである。この消されたピラミッドは普段この場所のシンボルであり、ルーブルという美術館の顔の役割をになっている。それを消すということが、人々にどういう感情を抱かせるだろうか。JRは、作品プロジェクトによってある場所に介入することでセンセーションを巻き起こす。それが、美術によって社会的な実践となることを知っているからである。
Medium: color photograph, matte plexiglass, aluminum, wood (face mounted)
Dimensions: 100 x 100 cm (39 3/8 x 39 3/8 in.)
Acquired from Perrotin, 2022