NANAE MITOBE
水戸部七絵
1988年神奈川県生まれ。2011年名古屋造形大学卒業、2021年から東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画在籍中。主に人物を描く。しかし、絵画というものの一般的な認識を逸脱する尋常ではない絵具の厚みを伴う。「I am not an Object」とは水戸部の東京オペラシティアートギャラリーでの個展タイトルであるが、この「Object」は必ずしも人ならざるものとしての(存在としても人権的な意味でも)物体、という意味だけではなく、絵画か彫刻か?とこれまでに数多投げかけられてきた問いに対する回答でもあるだろう。「not an Object」とは翻って、絵画である、という水戸部の強いステートメントになっている。著名人を題材にすること、社会問題に深く言及すること、音楽や楽器との関連性など、作品の内容にまで目を向けてみると、暴力的なまでの絵具の厚みがより必然性を伴って見えてくるはずである。この厚みと重みは、絵具を手掴みでキャンバスに塗りつけることで作られる。描く対象への尊敬や、批判や、愛が、或いは作品を観る人々へ送り届けたいメッセージが、平面的にはもはや収まりようのない熱量となって、絵筆を介することすら煩わしいのかも知れない。「project N 85 水戸部七絵|I am not an Object」(2022年、東京オペラシティアートギャラリー)、「VOCA展2021」(上野の森美術館)、「APMoA, ARCH vol.18 DEPTH ‒ Dynamite Pigment -」(2016年、愛知県美術館)など。CASIO「G-SHOCK 2100シリーズ」のPR映像に出演するなど、活躍の場を広げ続けている。