SAKI MATSUMURA
松村咲希

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1993年長野県生まれ。2017年京都造形芸術大学芸術研究科修士課程芸術専攻ペインティング領域修了。さまざまな技法を同一平面上に混在させるが、混ぜ合わせるのではなくむしろその差異を明らかにすることで、違和感を生じさせる。作家のステートメントには、絵画をはじめとする平面作品に「現実とのズレ」を再認識させる性質がある、と述べられている。絵画という形態は、それが平面である限り三次元の現実空間を表現するにはどうしても無理が生じる。その二次元と三次元の決定的差異を補うためにさまざまな技法と表現が生み出され続けたことで絵画の写実性が、あるいはそれらを否定・超克しようとする形で絵画の抽象性が、その両者の発展の成果として今日の絵画は成立している。松村の作品はその原点に再び立ち返るものだ。松村の作品では、異なる技法同士がレイヤーとして重なることはあれど、視覚的には境界線が生じている。それも曖昧な境界ではなく、極めて克明に意図された境界が表れている。すなわち、鑑賞者に対して絵画の中での空間認識を意図的にズレさせることを企図するという意味になる。松村は作品上の境界にある「ズレ」を受容した上で新たに問い直すのである。絵画内の空間認識がズレるならば、現実空間の認識もまた容易にズレるのではないか?トーキョーワンダーシード2017入選、「JALX ART+WINE PROGRAM」ボージョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーラベル作家(2019年)など。