TAISHI HATAYAMA
畑山太志
1992年神奈川県生まれ。2017年多摩美術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画研究領域修了。「素知覚」と独自に呼称するありのままの知覚というものを想定して絵画を描く。五感に依拠しない、五感よりも前の状態に感応しようというのだから、かつてシュルレアリストたちが「超現実」として体現を試みたものにも通じている。アンドレ・ブルトンは「シュルレアリスム宣言」においてそれを「理性の監視を排除する」ことだと表現した。本能や霊感と呼ぶものかも知れない。多くのアーティストはそれに名前をつけることをせずに画面に向き合ってきた。対象物の存在から発せられる気配のようなものが畑山の深奥に触れることを言うのだろう。畑山と対象の間にのみ発生している極めて閉じた世界の張り詰めた関係性。畑山が対峙したこの現象が「素」のままに、筆先から絵画として流れ出ていく。畑山はその間「素知覚」からキャンバスへのイメージの移行を担う媒体であって、知覚する主体としては存在していない。知覚そのものが畑山の身体や精神から独立して「素」の状態に置かれていなければならない。色彩と形象のオートマティズムである。「神宮の杜芸術祝祭」(明治神宮ミュージアム, 2020)、「網膜と記憶のミトロジー」(セゾン現代美術館, 2018)など。「第1回CAF賞」優秀賞および名和晃平賞(2014)を受賞。