-
単純かつ最高のもの (捨て値)
-
Year: 2005
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 16 x 22.5 x 3.3 cm (6 1/4 x 8 7/8 x 1 1/4 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2025
ゼロ・サムネールと呼ばれるシリーズの最初期に作られた一点。2005年ごろから現在に至るまで岡﨑にとって最大規模の作品群となっている。多くの作品では絵画内容に呼応する形で独特の途切れた立ち上がりのある木製フレームが付けられた空間的な設えになっており、この作家が彫刻家でもあることを思い出させる。本作ではそれはキャンバスの背面に重なるようにあって側面への立ち上がりはなく、横に回り込まなくてはその存在に気付き得ない。これによって必然的に絵画に向けられる正面からの視線が斜方へと誘導される。日本のキャンバス規格で0号(「ゼロ」)、SM号(「サム」ホール)と呼ばれる手のひらほどの大きさのキャンバスに描かれ、絵画の形式として規格上の最小単位まで抽象表現を切り詰めていることを示している。何らかの事象を抽象するということはすなわち個別の特徴や事情を排除し(捨象)、単純化と普遍化によってその事象に関する根源的な表象へ至ろうとする態度を取ることであり、岡崎は物理的な作品寸法においてもそれを実践しようとしているのかもしれない。本作の画面は、ゆったりと崩れた方形の構図が取られている。その手つきは、「描いた」というよりも、狭小な画面において最適な一手を丁寧に選びながら色を物質的に「置いて」いったかのように想像される。それも最小限といってもよいほどに手数が少ない。それ故にか、透明/不透明、艶のある/なし、厚い/薄い、濃/淡といった絵具の性質が極めて端的に示されているようにも見える。スコラ学者のオッカム、工業デザイナーのヘンリー・ドレイファス、建築家のミース・ファン・デル・ローエなど、単純かつ簡潔なもの中に最高(最良)を見出すとした先人は多い。ゼロ・サムネールは過去の美術作品や物語等さまざまなものから着想を得て制作されており、詩的な作品タイトルがそれを示唆する。