-
あの日の空を覚えてる 1932.12.12 / I Remember That Sky 1932.12.12
-
Year: 2024
Medium: digital type-C print, stereoscope
Dimensions: 23 x 18 x 33 cm (9 x 7 1/8 x 13 in.)
Acquired from Maho Kubota Gallery, 2025
「昨日の空を思い出す」シリーズでは、前日の空に浮かんでいた雲の形をグラスの中の水にミルクで彫刻した。本作で扱われているのは昨日の雲ではなく、100年ほど過去にある人物が記録した雲である。気象学者の阿部正直(1891-1966)が富士山にかかる雲の研究のために残したいくつかの写真資料がある。ステレオ写真という左右の視差を利用した立体視を再現する写真技術がある。映画や写真に造詣が深かかった阿部は、雲という流体の記録のために映像や写真のさまざまな技術を取り入れていた。本作は現在も資料として残されている1932年12月12日11時32分の富士山頂にかかった傘雲の様子を写したステレオ写真(東京大学総合研究博物館蔵)を元に制作された。記録写真は左右に500メートルほど離れた二地点から同じ構図で同時刻に撮られた。INOMATAはこの記録写真から3Dデータを作成し、グラスの中にミルクの雲としてその景色を再現し、阿部に倣ってステレオ写真として撮影した。付属するステレオスコープを用いればその二枚の写真は鑑賞者の視界で複合され立体的な像を結ぶ。100年ほどの時を超えて阿部が見た笠雲はいっときグラスの中に蘇り、かつてその雲があった空に向けられた阿部の眼差しをINOMATAは複写したのだ。私たちはおよそ100年の時を経て二重となったステレオ写真を介して阿部と自らの眼差しを重ね合わせ、また新たに記憶する。