untitled
Year: 2012
絵画を主な制作スタイルとしているアンカートだが、彫刻作品も多く、また、時には本作のような実験的な作品も制作する。本作ではいくつかの島が浮かぶ水景を望むプールから撮られた写真をベースとしている。作品中央の島のあたりは変色したように見られるが、技法から推察するとそれは炎によって熱を加えた痕跡のようだ。黒い煤がところどころに付着している。また、アンカートが絵画作品でも多用するオイル・スティックによって画面を撫でるように引き摺ったような色彩が伸びている。滴を落としたような絵具の後、鋭い鉤のようなもので付けられたであろう傷跡もたくさんある。旅先などで撮られるようなありがちな風景写真のはずが、アンカートの手によってその平穏からずらされて、写真には元々表れていなかった全く別の心象が鑑賞者に向けて投げかけられる。アンカートの絵画で時折見られるような、他者には予想され得ない写実から遠く離れた色彩や構図を選ぶ手つきにも同じものが感じられるだろう。
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