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Shoup Glacier_001
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Year: 2017
Medium: Lambda print
Dimensions: 24 x 120 cm (9 1/2 x 47 1/4 in.)
Edition: No. 1 of 5
Acquired from New Auction, 2023
石塚の重要なテーマに氷河があり、本作はその氷河の写真シリーズの中でも代表的なイメージである。2016年(発表:2017年個展「パノラマ」スパイラルガーデン)、および2022年(発表:2022-23年「DOMANI・明日展 2022-2023」国立新美術館)に6メートルほどの全長で制作されたもののヴァリエーションとなる。「Shoup Glacier」とはアラスカにある氷河の名称だ。石塚は、とある雑誌の仕事でこのシュープ氷河に相対した体験が写真家としてのキャリアを大きく決定づけたと回顧している。シーカヤックで一人漕ぎ出して、海岸に達した氷河の末端に接岸しながら数枚の写真を撮った。本作はそれらを繋ぎ合わせたパノラマになっている。しかし、これが単にカメラを水平に回転撮影して得られたパノラマ画像ではないことは、作品を良く見れば気付くだろう。フィヨルドの潮の流れは比較的激しいため、海上でひと所にとどまっての撮影は不可能である。ちっぽけなカヤックは潮に流され、波に揺られ、氷河の同じポイントを撮ったつもりでも大きさや角度が異なって写ってしまう。本作で石塚は、結果的に同じでありながら異なったもの、として写った複数の氷河を再び一つに繋ぎ合わせ、それをパノラマとしたのである。いくつかの特徴的な氷壁の造形に着目するとおそらく5~6枚のカットがどのような差異をもって繰り返されているのかが分かる。石塚が実際に目と体で体験した氷河は想像を絶するものだったに違いない。本作は、ひと目では到底見渡すことのできない圧倒的な規模で眼前に現れた氷河の存在そのものを描写しているのだろう。