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untitled
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Year: 2021
Medium: oil on canvas
Dimensions: 162 x 130.3 cm (62 3/4 x 51 1/4 in.)
Acquired from New Auction, 2023
山田といえば、広く大胆な色面と直線的なストロークが入り混じった極端な緩急のある絵画スタイルが特徴的な画家だが、本作は2021年制作の作品であり現在の山田の作風との比較によってその特徴が際立ってくるだろう。曲線的な線と流動的な色彩構成の中にもその後の展開につながっていく要素が明確に表れている。これより以前の山田は、ランダムな構図による抽象度の高い作品や、肖像画と山の風景画を合成したような絵画に挑んだりしていた。本作では、それまでの試みを踏まえて山田がより観念的な抽象表現へと向かっていく変化の一端がよく表れていると言える。画面周縁に広がる赤から紫までの広い色調が線のうねりに沿って時折白く発光するような明るさの変化を伴いながら中央に向けて運動の密度を増していく。重層的な色彩がまるで瑪瑙のような縞様を作り出して、それが縦横に交錯している。画面の大半は緩やかなグラデーションが渦巻くような構図になっているが、画面右下あたりの一部はやや唐突に稲妻のような黒い線が明瞭に現れ、赤やピンク、明るい赤紫、オレンジ、白、青緑など、目まぐるしい色彩の変化を伴ってごくささやかな範囲にも関わらず非常に強い特異性を示しており、それが本作の性格を決定づけるほどの画面のアクセントとなっている。