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View, a cherry tree, rain, wind, 7 July 2019
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Year: 2019
Medium: pigment, acrylic and others on canvas
Dimensions: 33 x 41 cm (13 x 16 1/8 in.)
Acquired from ANOMALY, 2023
桜の木、雨、そして風。まるで詩のような作品タイトルが印象的である。日本では7月7日は七夕を祝う習慣が広まっている。由来となる牽牛と織女のエピソードからすれば晴れやかな天候が望ましいのだろうが、太陽暦に沿っている日本の多くの地域で7月の初旬はまだ梅雨が続く時期にあたり、七夕は統計的にも雨天や曇天となることが多い日でもある。2019年も、津上がこの絵を描いた土地では雨が降ったのだろう。本格的な夏の訪れを前に桜の木は大いに水を吸い上げ豊かに葉を茂らせていたはずだ。そこに雨と、一陣の風が通り抜ける。雨季の強い湿気を含んだ風が桜の木を騒がしく揺らし、葉を濡らす雨水が風に乗って宙を舞ったことだろう。茶色は枝の描写だろうか。ライムグリーンから深い青緑までの色彩がその枝らしき一振りの茶色の周りに重なっている。梅雨の時期特有の、鈍色に沈んだ景色の中にさえも、ささやかな色彩の躍動を見出す津上の丁寧な眼差しが伺える。