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nn DOLL collage II
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Year: 2022
Medium: oil on canvas
Dimensions: 145.5 x 112 cm (72 3/4 x 56 in.)
Acquired from Changting Gallery, 2023
松浦は自ら制作した人形やぬいぐるみをモデルにした絵画を描くことが多い。本作も、タイトルから類推される通り、手作りの人形を題材として画面に複合的な素材を用いたややコラージュ的なアプローチの作品である。明るい赤い髪が印象的だが、右目は継ぎ接ぎしたように突如として暗く鋭い視線をこちらに向けている。赤い髪と首元に掛けられたは煌びやかな宝飾によって全体的に華やかな印象であるものの、生気のない肌の色や物憂げに見える表情が一方では暗さとなって一枚の絵の中で真逆の性質が拮抗している。人らしい造形のものを命ある存在のように私たちは認識しがちだが、ここで松浦が描くものは魂のないぬいぐるみである。したがって、私たちがこの絵に人らしい表情や人体造形的な均整美を求めて鑑賞すると、恐ろしさなどの誤った感情に至ってしまう。松浦が自作するぬいぐるみや人形のように「ディフォルメ」されたものとは、本来の意味を辿れば自然的造形の模倣から離れて、歪曲され、変形された表現を指す。そこに人らしさを求めてしまう私たちの期待の眼差しにおいては、松浦がモチーフに見出した造形的な美しさが真逆に転じて見えているのである。