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untitled
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Year: 1973
Medium: oil on canvas
Dimensions: 150 x 200 cm (59 x 78 3/4 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2023
1950年代初頭フランスに起こったアンフォルメル運動に加わり日本へ彼らを紹介したアーティストとして知られる今井の1973年制作の作品。深い青緑を背景に紅色の力強い造形が描かれている。アンフォルメル(informel)とは非定形を意味するが、今井のこうした作品にはその語義が強く感じられる。運動を主導したのは批評家でありコレクターでもあったミシェル・タピエである。同時期にアメリカではアクション・ペインティングの流行がありタピエは彼らをヨーロッパに紹介し、日本の具体美術協会もアンフォルメル運動に共鳴するものとしてタピエに評価されることで世界へと躍進した経緯がある。戦前のバウハウスやピュリズムなどの幾何学的抽象や構成主義的な絵画とは異なり、主観主義的、個人主義的な表現を広く受容している。アンフォルメル運動の精神はフランスで当時流行した実存主義に近く、個人の生の在り方が作品に表されることを重んじる。本作が制作された頃はすでにアンフォルメルの運動や熱気は収束していたものの、アンフォルメル期から花鳥風月期に移る過渡期にあたる60年代から70年代にかけての抽象絵画には、身体性や精神性に由来する情動的な表現、つまり今井という個人の実存の表出が一貫して見られる。本作の、画面を力強く分断するかの様なエネルギーを湛えた筆致は過渡期の今井作品の特徴をよく示している。