Year: 2016
Medium: lenticular films and light reflecting papers on wooden panel
Dimensions: 40.2 x 79.5 x 15.5 cm (15 7/8 x 31 1/4 x )
Acquired from Yumiko Chiba Associates, 2023
金氏は、彫刻家でありながらも、極めて柔軟なメディウムを使って彫刻の概念を拡張している作家である。金氏は自身の作品をいくつかのシリーズに大別しており、「Ghost in the Liquid Room」シリーズは中でも早い時期から制作が続けられている。タイトルからも推察される通り、ここでは流動する液体のイメージから呼び起こされてくるものを「Ghost」と仮称している。化粧品や食品のどろりとした液体の写真を使ったコラージュ、それをより空間的に造形したモビールや彫刻的作品などに分岐しつつ発展を続けている。本作は、2016年の森美術館「六本木クロッシング」でその第一作が発表されたシート状のレンチキュラー・レンズを使用した作品群に連なっている。レンチキュラーとは視点の移動によって、その内側にある図像の可視・不可視を展示させる特殊な効果を示すものだ。本作では、三角柱になったパネルを用いており、よりその視覚的な変化が大きい。全く同一の物体に対して、ある視点に立てば全く不可視であったものが、別の視点に立てば現れてくる。視線をかき乱すように複雑にコラージュされた画面(この場合はあえて絵画的に表層を捉えてそう表現する)によって、レンチキュラーの揺れ動く視覚効果はより強められている。作品は物体としては硬く、確固たる存在がそこにある。しかし、その表層に現れているイメージは常に止まることなく流転している。この厳然たる物性の中に蠢くイメージを、得体の知れない「Ghost」と呼ぶのである。