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Art d'Ameublement (Earhart Light)
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Year: 2022
Medium: spray acrylic, thermoformed PETG
Dimensions: 133.5 x 103 cm (52 1/2 x 40 1/2 in.)
Acquired from TARO NASU, 2022
航空史に詳しい人であれば副題にある「Earhart Light」に思い当たるかもしれない。1928年に女性では初めての大西洋単独横断飛行の偉業を成し遂げたパイロット、Amelia Earhart(アメリア・イアハート)。彼女の名を冠するこの灯台は、太平洋の孤島ハウランド島に建っている。1937年、赤道上世界一周飛行の冒険に挑んだイアハートは、この島へ向かう航路中に消息を断った。灯台はイアハートの飛来を迎えるべく建てられたものだった。田島は「Art d’Ameublement (家具の美術)」シリーズにおいて離島などに因んだ副題を付けている。それらは困難の象徴であり、未知の象徴である。本シリーズは、裏面に色彩を噴霧したPETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)をボックス状に熱形成したものだ。田島は「Shell」または「Frame」だと表現しているが、この透明の殻のなかに封じられているのは「色彩」という極めて観念的なものであり、作品の本質はそこから惹起されるイマジネーションである。イアハートは曇天の中絶海の孤島を目指して飛んだ。視界を阻む雲の中、絶望と希望に入り混じった極限状態でイアハートは何を見ただろうか。彼女を待つはずの灯台の光を幻視しただろうか。色鮮やかな色彩の霧を閉じ込めたもの、それを田島は抽象絵画の比喩表現としてエリック・サティを引用して「家具の美術」と呼び、それを見る私たちはそこから何をイメージするのかを問われているのだ。Abstract (抽象)の本質を問う作品である。