Year: 2022
Medium: acrylic on panel
Dimensions: 30 x 30 cm (11 7/8 x 11 7/8 in.)
Acquired from MEET YOUR ART, 2023
King of Pop、マイケル・ジャクソンの在りし日の私生活のワンシーンを描いたもの。大の動物好きとしても有名だったマイケルは、彼の良き友人として最も知られているだろうチンパンジーのバブルスの他にも、蛇や蜘蛛、虎、キリン、オウムなど多くのペットを飼育していた。その中でも、プリンス&プリンセスと名付けられた番の鹿が1985年のバレンタインデーに出産を経験した際には、その新たな家族の誕生に立ち会いバレンティノ(バレンタインのイタリア語名)と名付けたという。鹿の世話をする写真がいくつか残されているが、本作はそれら写真の一枚を元にしている。オリジナルの写真の中では穏やかな笑みを浮かべているマイケルの表情は、佐藤の作品では酷く青ざめて硬直して見える。赤い唇がその青白い肌に毒々しく映える。佐藤は、人間を心理的、肉体的に解剖するようにして描く。滑らかな肌の内側には、温かな血や肉、骨がある。普段目に触れることのないはずのそれらを偏執的に描くことは、佐藤が抱く他者への、ひいては自らへのある種の偏愛の現れである。この肉体の内側までも暴いて曝してしまいたいという佐藤の欲望は、その対象の最奥部までを知り尽くしたいという精神的な関心の現れなのだとも言えるだろう。本作においてはそうした直接的な描写は控えられているが、マイケル・ジャクソンという極めて繊細な人間の内側に秘められた狂気に向けて佐藤の眼差しが鋭く差し込まれているのを感じさせる。