Year: 2022
Medium: acrylic and UV printing on canvas
Dimensions: 292.1 x 227.6 cm (115 x 89 5/8 in.)
Acquired from GOLD WOOD ART WORKS, 2022
本作は、当コレクションの契機となった作家の一人である山口に、UESHIMA MUSEUMの設立を機に制作を依頼したコミッションワークであり、長辺およそ3mに及ぶ大作である。NYより一時帰国した山口が完成前の当スペース内において三日間にわたって行った試作を踏まえた上で、NYのスタジオで度重なるブラッシュ・アップを加えて完成された。これまで「OUT OF BOUNDS」シリーズなどに見られる、激しいストロークを自立させた支持体不要のシェイプド作品が中心であった山口にとって、矩形のキャンバスやパネルという支持体の存在に改めて向き合っていた作家としての大きな転換期に制作された。山口のシグニチャー・カラーである青、その中でも独自に開発した特別な青が要所に使われている。色彩のクールさに反して恐ろしいまでの熱量を湛えていることは見ての通りである。画面の枠に収まり切ることなど到底不可能なように思われる、真っ直ぐに振り抜かれた迷いのないストロークが、凄まじいスピードで疾駆するムーブメントを作品内に生じさせており、周囲の空間までをも大きく揺さぶるかのような錯覚に陥る。鋭利に砕けたガラス片のごとき鮮やかな色面の断絶によって、ストロークがトップスピードから突如としてゼロになる。豊かな質感を伴ったプリント下地と、分厚い絵具という多重のレイヤーが、作品の複雑な空間的奥行きを作り出している。画面の多くを占める直線的ストロークの間隙を縫うように、有機的なうねりを伴った彫刻のような線が水飛沫のような不規則な動性で奥から前面へと迫ってくる。本作において、キャンバスという新たな地平を得た山口のストロークは絵画表現として極限に近い運動性を現前させるに至っている。