Year: 2020
Medium: oil on canvas | oil, collage on canvas
Dimensions: set of 2, 159 x 133 cm (62 5/8 x 52 3/8 in.) each
Acquired from SBI Art Auction, 2023
カーウィックの作品は、蛇や虎などの猛獣、ブーケや植木などの植物、人物などを題材とするが、それらは神話や物語に登場する奇妙な怪物のように変形され、奥行きを欠いた極端に平面的な表現を特徴としている。カーウィックは、かつてあるインタビューでマティスやフランケンサーラー、ロスコなどの作家について個人的な見解を述べており、特にロスコの作品を基本的に好んでいることを明かしている。独学で絵画を学んだカーウィックにとって美術館等で目にすることのできる彼らの作品から直接的に得るものが多かっただろう。二枚組の絵画である本作は、一方にカーウィックの好む鉢植えのモチーフが描かれ、もう一方はまさにロスコの作品からの影響であろう三色の色面による抽象絵画が並べられる。小さな白い花が咲く鉢の下には、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスと恋人のナンシーが名声の中薬物に溺れていく破滅的な日々を描いた『Sid et Nancy(シド・アンド・ナンシー)』のタイトルが見えるが、それによって肌色から黄土色を基調とした色彩や可憐な花が示す画面全体の安らかな雰囲気とは真逆のイメージが挿入される。抽象的な作品の白、茶、ピンクの三色は、下地となるキャンバスとはまた別のキャンバス地にそれぞれ着彩したものが貼り付けてある。さらに細かく見ていくと、青や赤などが表層の色彩の下に隠されているのが分かる。こうしたディテールは、簡素な印象を与える全体像からは想像できない意外な面白さになっている。二枚の作品の間にはさまざまな表現上の差異がありながらも、色や構図がお互いに響き合い一つの作品としての調和が成立している。