Year: 2013
Medium: rope, plaster, "The Peace Flame", soot, etc. on panel
Dimensions: set of 4 panels, 176 × 360 cm (69 1/4 x 141 3/4 in.) overall
Acquired from New Auction, 2022
広島に投下された原爆で叔父を亡くした山本達雄氏によって、現場の残り火が形見がわりにカイロに入れて持ち帰られたものが山本氏の郷里の福岡県八女市星野村に引き継がれて今も燃え続けている。星野村の「平和の火」と呼ばれるものだ。本作はその「平和の火」から分火した炎を用いて400点余りの動植物の絵画を焼く「平和の日」プロジェクトで作られた作品のうちの一点となる。本作は四曲一隻の屏風の形式をとっており、第二扇(右から二枚目)に悠然と佇む雄鹿が描かれている。焼き上げた際の煤や焦げによってまるで朦朧体のような様相を呈している。2011年には最も象徴的な反戦絵画である丸木夫妻による「原爆の図」を展示保管する丸木美術館(埼玉県)での個展「Level 7 feat. 広島!!!!!」を開催し、2013年にはその続編として位置付けられる旧日本銀行広島支店を会場として開催された個展「広島!!!!!」が開催され、本作もそこで展示された。彼らと広島との関係は、2008年に原爆の爆心地に最も近いモニュメントとして保存されている原爆ドーム(旧広島県物産陳列館)の上空に飛行機雲によって「ピカッ」という3文字を描いたことで当時大きな議論を巻き起こしたことが発端となっている。以降、被爆者団体とも積極的に交流を続けながらこの問題に関する展覧会を断続的に開催し、原爆・広島・社会・美術表現についての論考をまとめ上げていくなどした。その過程においてこの「平和の日」シリーズが作られたという経緯については知っておくべきである。丸木夫妻の生々しい屏風絵の数々を間近に見たはずである。これは Chim↑Pom from Smappa!Groupが描く「原爆の図」なのだとも言えるだろう。