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									Year: 1995
								
								アグネス・マーティンは特定サイズの正方形のキャンバスに消え入るような儚い水平線あるいはグリッドのラインを引く作品で知られる。本作はマーティンが終生にわたって数多く残したペーパーワークの一点である。白、赤、青の水平の帯が、2:1:1の幅で繰り返されている。遠くから眺めると工業製品を思わせる機械的な線の集合にすぎないが、間近にみると手仕事の細かな揺らぎや乱れもあり、淡い色面にも思いの外、塗りの表情があることに気づく。水彩の滲むような風合いが、この端正な画面の中で数少ない作家の息遣いを感じさせる要素となっている。人生の後半、マーティンはニュー・メキシコのタオスに住んだ。タオスは砂漠地帯の荒野にあり、マーティンに先んじてオキーフが好んで滞在制作した土地としても知られる。海を見て形態を思い浮かべることはないように自らの絵画もまた無形の抽象表現である、と述べたマーティンの内面と、この茫漠とした荒野は響くものがあったのではないだろうか。仏教や禅に親しんだ作家でもある。淡い色彩と端正な線の奥にマーティンが見出そうとしたものは何か、静かな思索を促す作品である。
							 
						 
						
											 
				 
				
									
					
								
				
				
			 
			
			 
    
    
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