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Fragment
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Year: 2021
Medium: copper thread, acrylic, fabric, frame
Dimensions: 80.6 x 60.6 cm (31 3/4 x 23 7/8 in)
Acquired from Perrotin, 2022
深い緑色に塗装された額装、青いフェルト、そこに花火のように開いた色鮮やかな放射状の線がいくつか配されている。日本人の目には見慣れた紙縒の細工のようにも見えるが、実際にはアトリエにあった銅のフィラメントに色を付けたものを使っている。本作が発表された個展において、エステーヴはパレイドリア(Pareidolia)について思考したという。岩肌が作る影を人の顔と見誤ったり、ロールシャッハ・テストで何かしらを想起する際など、人の視覚は未知の形に対しても既知の形を探そうとする。本作を前にして、鑑賞者がそれを見て花火のようだ、星のようだと感ずる時、この未知の形をどうにかして既知のものに当てはめようと働いている精神が露わになるのである。エステーヴの作品は既知のものに何か手を加えて、未知のものを仮想的に作り出す。「Fragment」(断片)というタイトルが示唆するように、断片化された暗号を作り出すのである。それを目の当たりにした時、人はその先に示されているはずの何らかを掴み取ろうとして記憶や経験の引き出しをあれこれと開けながら、近いであろう解答を模索するのだ。