月光のピクニック / Picnic Under the Moonlight
Year: 2022
Medium: ceramic
Dimensions: 14.9 x 7.9 x 11 cm (5 7/8 x 3 1/8 x 4 3/8 in.), excluding pedestal
Acquired from Mitsukoshi Contemporary Gallery, 2022
手のひらに乗る程度の小さなセラミック製の彫刻作品。全身が青みがかった少女が大きな瓶を膝の上に抱えつつ座っている。瓶は外側がオレンジ色、内側は明るい黄色になっており、少女の青と鮮やかな色彩的な対比を見せている。山本の活動初期に多く見られた少女や水をモチーフとしたドローイング作品が思い出される。キノコ類や植物類のような有機的な造形やそれに伴う抽象度の高い描写が近年の作品では多用されているが、元々は人物をモチーフとしたより具象的な描写が目立っていた。直近の制作では、キノコ的なイメージは作家の精神の深部において内面化されており、表面的には初期の具象的傾向に再帰しつつあることが伺える。強いてそのように見れば、本作では口の広い瓶の造形がキノコ的とも言えるだろうか。本作はセラミック作品であるから、遡れば土だ。本作を発表した個展(日本橋三越本店コンテンポラリーギャラリー, 2022年)のアーティスト・ステートメントには「私にとっての興味の対象は、目に見えない土の中にあるのではないかと考えている」とある。キノコと通常私たちが認識するものは、子実体と呼ばれる植物でいえば花や実にあたる部分であり、生命体としての本体である菌糸は土中に網目のように広がっている。山本が自ら言うように、この見えない土中に広がる微生物たちのミクロコスモスを自身のイマジネーションの在り方に重ねた結果としてグロテスクですらある有機的な表現が続けられてきた。本作では、そこで見えない部分と作家が呼んだものが、土ごと練り込まれて表には現れ出ないものとして作品の内部に隠されているのだ。山本はキノコがぽっこりと森の中に顔を出す様子をこの少女像のように愛らしいと捉えており、本作は事実そのように表現されていると見るべきだろう。ただし、その愛らしさの内側や足元の土中には、生命の還元を司る菌糸の広大な網が隠れていることを知った上で、である。山本が陶作を通じて土に触れねばならないと考える必然性はここにあるだろう。
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