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Pot 2
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Year: 2013
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 73 x 61 cm (28 3⁄4 x 21 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2022
平子は自然と人の社会の関係性や、自然というものの価値観についてを議題とするような作品を描き続けている。自然の動植物が人の手によって管理された状態である公園などを、都市に生きる人々は好む。荒野や奥深い森林などの人の足の届かない地はあまりに人の世界と遠すぎて日々の生活の中では相対化の対象にすらなっていない。平子の描く絵画でも、人の営みに近い場所にある自然が描かれる。「彼」と平子が呼ぶ人と植物の混成体についても、両者が離れすぎず共生し得る境界を象徴しているように思える。本作のモチーフは、タイトルにある「Pot」つまりこの場合鉢植えを表しているだろう。園芸は人々が身の危険を犯すことなく生活の中に自然を招き入れる行為だ。その合目的性を追求するために鑑賞性を高めたり育成しやすいような品種改良が行われることは、ややもすれば自然への冒涜とも考えられる。しかし、それによって人々の心と生活は豊かなものとなり、少なくとも野蛮や暴力とは異なる結果をもたらしている。本作においては、濁った背景に、暗く冷たい印象の鉢が描かれている。そこに植えられているはずの植物のフォルムは抽象化された黄緑色のうねりに置き換えられている。垂れ落ちているブドウの房のような花はムスカリだろうか。赤い髑髏のように見えるものを飾る四角い木枠が吊り下がっているのは、作品全体のトーンの暗さに共鳴して不穏な印象を与える。自然に対する人間の関わり方というあまりに複雑な主題を、自然状態からすればある種の歪みである鉢植えから表現しようとしているのだろう。