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Still Life with Eroded Bust of Diana the Huntress, Sneaker and Porsche
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Year: 2022
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 152.4 x 127 cm (60 x 50 in.)
Acquired from Perrotin, 2022
アーシャムが初めて発表した油彩画のシリーズより。描かれている内容は現代的なオブジェクトが多いが、スタイルとしてはティピカルな静物画を踏襲している。ローマ神話の女神ディアーナ(ギリシア神話におけるアルテミス)、ナイキのシューズ、ポルシェの模型、林檎、デザイン事務所nendoの図録、枯れた花束、それらは青く、他はセピアとグレーで占められている。色覚異常を抱えるアーシャムの視界にある色彩を象徴するようだ。ここでは、アーシャムの誘導に従って、この画面の中での色彩、つまり青く描かれたオブジェクトについて、その次にセピアのトランプ、砂時計、横倒しの瓶、ビーカーなどを順に図像学的に読み解いていくのが正しいのだろう。ディアーナは天界、地上、地獄においてそれぞれ月、貞操、魔術の三つを司る。林檎は原罪を、書籍は知識と学問を表す寓意であり、ポルシェはおそらく富や成功を含意していると思われる。本作で最も重点をなしているのは枯れた花束ではないか。本作の構成は寓意画(Vanitas)のそれであるのは間違いなく、そこでは死を通した生を描出する。枯れた花はヴァニタスで多く描かれる髑髏などと同じく死の直接的イメージであると共に、原罪によって限りある生と生産の苦役に従事し続けねばならない生を象徴する。クラブの9のトランプカードが画面中央に描かれているが、欧米のカード占いなどでは知的探究心や不安などの意味合いがあるとされている。「Fictional Archeology(フィクションとしての考古学)」を標榜するアーシャムである。本作が全体として何を物語るのか、現代のヴァニタスであるアーシャムの静物画を読み解くには同時代性と虚構を考慮した新たな寓意を探す手続きが必要になるだろう。