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untitled
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Year: 2022
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 128 x 160 cm (50 3/8 x 63 in.)
Acquired from Hagiwara Projects, 2022
水玉やクロス、ストライプなど、単純で基本的な構図がさまざまな色彩のヴァリエーションによって繰り返される。本作では、大きく4〜5通りのパターンのまとまりが確認できる。しかし、この簡素に見える表現の中には、わずかな明度、彩度の差異を恐ろしい解像度でコントロールする今井の極めて鋭敏な色彩感覚があり、また、偶然性をも凌駕する色面構成の斬新さはこれまでの絵画表現には比較するものがないだろう。例えば余白と我々が認識する白場は、本作においては果たして無意味な白であるだろうか?偶然を装って隣り合わせに配された色彩が華やかな対比関係を示していることに、どれだけの鑑賞者が自ずと気付くことができるだろうか?その点において、本作を含む今井の作品はなべて挑発的である。
布地のパターンや、デザイン性の強いプロダクトで日頃目にする幾何学的な色彩構成は、今日ではあまりに一般的となっておりもはや改まって絵画の俎上に乗せるべき議題はほぼ残されていないのではないか、と思われていることだろう。フォーヴ、キュビスム、カラー・フィールドの作家たち、コンセプチュアル・アートの分野でもダニエル・ビュランや、ミニマリストのイミ・クネーベルなど、多くの先達たちが喧々諤々の批判を重ね理論を更新し続けることでモダニスム以降常に絵画のテーマとなり続けてきたからである。今井はその終わりのない議論の先端に位置する。スカートの襞が偶然作り出した色彩と構成に目を奪われて以来、布地のパターンをさまざまに再構成した絵画を続けているというが、その作家の原点としての美的体験は当事者である今井にとってはそれが過去いかに繰り返され消耗され尽くした主題であったとしても、むしろそうであればこそ画家としての生涯をかけるに相応しい大義があったはずである。絵画の基本要素である、色、形、そして平面性、それら原点に再び立ち帰って、近代以後の絵画の成立の過程に対するオルタナティブな回答を返そうとしている。本作は丸亀市猪熊源一郎現代美術館(香川)および東京オペラシティアートギャラリーでの個展「スカートと風景」に出品された。