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Soliloquy
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Year: 2022
Medium: acrylic, oil on linen over panel
Dimensions: 145.5 x 112 cm (57 1/4 x 44 1/8 in.)
Acquired from Kotaro Nukaga, 2022
森本の作品は光を繊細に捉える。やや粗いとさえ言える筆致は、光という捉えどころのないものの性質をその粗さによって正確に捉えている。写真に画像加工を施したものを下絵としているためか完成された写実性が画面全体から感じられるが、それはあくまで画面全体を見渡した時の印象にすぎない。先述の通りディテールに目を向ければやや粗目の筆致が丁寧に重ねられて程よく絵画らしい質感を感じさせ、寧ろ古典的でさえあるだろう。本作は、夜の街に佇む一人の少女に目を向けている。それを静かに見返してくる彼女の瞳は、その真っ直ぐで強い性質が夜ながらもなお明るい街の灯りに照らし出されている。夜の冷たい色調の中にあって、柔らかなニットや取り繕わない頬にはほんのりとした体温が残っているようだ。
どこの町の夜にでもみられるような一風景であるにもかかわらず、背景をぼかした写真のように輪郭が滲んで粗い光の粒となった信号やヘッドライトが人物を取り巻いてやや非現実的な印象を与える。作家がかつてのインタビューでマジック・リアリズムを参照していると述べていた通り、現実的な風景を象徴性に傾かせて物語る森本の手付きはどこか現実と夢想の間を孤独に漂うような繊細な精神性を感じさせる。タイトルは独り言という意味だ。