Toyish Land
Year: 2022
コバヤシが描き続けてきた「生き物」がやや鎮痛な面持ちで座り込んでいる。左手は胸に当てられて、不安が伝わってくる。画面の色彩は明るく青空のような水色が広がっているにも関わらず、画面右手には雨雲が立ち込めておりパラパラと雨粒を落としている。「生き物」の足の指先で雫がひとつ跳ねているが、これは雨粒かそれとも血液だろうか。本作をはじめとするコバヤシの絵画はキャラクターの描写に目を奪われていると存外ディテールを見落としてしまう。本作も間近に見ればかなり強い筆触や様々なテクスチャーが使い分けられていることがわかる。特に和紙を張り込んだ下地に重ねられたアクリル絵具の色面や、力強いオイルパステルの輪郭線は、それぞれの画材の質感がかなり強調されている。「生き物」の瞳の中に映る光もまた細かく塗り分けられており繊細な表情を作り出している。こうした絵画的ディテールへのこだわりこそがコバヤシの作品を単なるキャラクター絵画から一線を画す一因となっているだろう。
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