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Lines of Flight op.692
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Year: 2021
Medium: oil on canvas
Dimensions: 100 x 72.7 cm (39 3/8 x 28 5/8 in.)
Acquired from YOSHIAKI INOUE GALLERY, 2022
詫摩はこれまで「逃走の線」と題した作品シリーズを展開してきた。キャンバス上の絵具が乾かぬ間に、全長2メートルもの自作のブラシ(複数の平刷毛を連結させて作る)を一気に引き下ろして仕上げるものだ。これまで一貫してモノクロームの表現であったが、本作は一転して初のカラーに挑んだ作品群のうちの一点である。カラーのシリーズにおいて「有彩色と無彩色」そして、「虚像と実像」を対比させているのだと作家は述べている。詫摩の過去作であるモノクロームのシリーズは風景の描写を線条によって暈す、現代版の朦朧体とも言える。クリアで明るい景色に湿り気を呼び込むのである。本作において、明るい青と赤が縦方向の筋を形成しながら緩やかなグラデーションによって混ざり合っていく様子は光学装置の走査線を想起させる。あるいはオーロラのように天井から降り注ぐ光線の波である。モノクロームの時代においては視認できた具象性(実像)が一切見られない完全なる抽象表現(虚像)に移行している。本作を含むカラーの作品は全て、詫摩の過去と現在の対比を念頭において鑑賞すべき作品であるだろう。