-
sonho
-
Year: 2022
Medium: digital video
Running time: 11min. 55sec. loop
Acquired from Isetan Shinjuku, 2022
藤崎は彫刻を表現の基軸に置いている作家である。しかしながら、最終的な形態から言えば、平面作品や本作のように映像作品としての作品も多数制作している。藤崎の映像作品としては「Metaball」シリーズがある。家庭用洗剤や溶剤、塗料などの日用的な液体を用いて、その色彩が混ざり合い、反発し合いながら流動する様子を映像化したものだ。本作もそれに連なるものだと理解して良いだろう。Metaballとは流体や曲面が癒合する動きを表現するためのCG技術を指すが、本作を含め、藤崎の映像にCGの要素は一切使われていない。工業的な製品は視認性の観点から鮮やかで識別しやすい着色がなされていることが多いが、液体製品についても同様のことが言える。生活の中で意識されることはほぼないと言って良いと思われるが、身の回りにもそうした液状の色彩は溢れており、またそれぞれの性質、粘性や流動性は用途によって様々である。それらを混ぜ合わせる時、液体同士が思いもよらぬ動きを見せる。この現象に対して藤崎は観測者に徹しており、作家としての作意はそこに与しない。藤崎は「とめどなく流れ、混ざり合い、反発し合う液体」の色彩と固定化され得ない物性そのものを映像という手段によって彫刻化しようとしているのである。この無作為の映像的彫刻作品によって藤崎が可視化するのは私たちが見過ごし続けているこの世界の真理の一端である。人工物の中にも自然の摂理があり、この根源的な現象に科学や論理に頼らずとも近接することが可能とするのは芸術の持てる力である。「sonho」とはポルトガル語では夢を意味する。