RYOICHI FUJISAKI
藤崎了一
1975年大阪府出身。2003年、京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了。大学院修了後には様々な職(解体工、塗装工、造形職人など)に就き、名和晃平の主宰するSandwitchにおいてはテクニカル・ディレクターとして名和作品のクオリティを支える重責を担ってきた。10年間の長きにわたって自身の制作から遠ざかっていた藤崎の才能を評価する名和や旧友たちから後押しされる形で2015年より作家活動を再開。破壊をテーマにしたパフォーマンス「Crash Addict」、流体の物性をミクロで捉えた実写映像「Metaball」、壁紙を剥がした痕跡による平面作品「Scan」、身体の運動性を三次元的に彫刻していく「Meltism」などの多数のシリーズ作品を展開している。幅広い制作スタイルからオールラウンダーのように思われるが、彫刻家としての本質を貫いていると言えるだろう。各作品において表されるものはいずれも素材の可塑性や物体の自立ということに軸足を置き続けているからである。その上で視点は彫刻というジャンルの内外から多角的に眼差されている。藤崎は自身の制作について「負と正」の関係性を時折口にしておりいかにも彫刻家らしい。篆刻には陽刻と陰刻があり、彫塑においてもボリュームを付け足していく塑像と掘削していく彫像とがある。彫刻は他の美術品と比較して極めて空間的なもので、物体として作品を示すためには、作品では「ない」空間を同時に必要とする。絵画においてはキャンバスなどの支持体が存在することが前提となるが、彫刻には作品として存在するために外部に依存しなくてはいけない前提条件がない(強いて言えば台座くらいだろうか)ので、常にその相対的な何も「ない」空間というものとの相関性を考えねばならない。藤崎は「正」よりもむしろ「負」を彫刻する作家なのである。