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Historias Cotidianas (two Works)
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Year: 2020
Medium: mixed media on wood, in acrylic box
Dimensions: set of 2, 55 x 43 cm (21 3/4 x 17 in.) each
Acquired from Sotheby's, 2022
スペイン語で付けられているタイトルは日本語では日常の物語といった意味合いになる。マカロンの制作はまさに日々の暮らしの中からインスピレーションを得ている。本作の不思議な絵画空間で起こっている非日常的にさえ映る光景は、いかにそれが奇異に見えるとしたとしてもありふれた日常風景であるということだ。マカロンは街ゆく人々を眺めながら、彼ら一人一人に違った世界があることを肯定しそれを丁寧に拾い上げて描画していく。異形に歪められた人体は、マカロンが捉えた彼らの内面性の発露であるという点、次に外見や容姿によらないマカロンの人間愛、そして、理学療法士でもあった彼の人体の構造や所作における解剖学的理解が垣間見える。本作においては、二面ある画面のうち、一方はとある室内らしき空間内の様子にフォーカスしている。部屋の中央にぼんやりと佇む人物の背後の壁面から、別の大柄な人物が長い腕を差し出している。彼らは仲の良い友人だろうか?後ろから驚かせようとする悪戯なのかもしれない。もう一方の画面では、一軒の家からやはり長い腕を伸ばして宙を舞う虫のような生き物に触れようとしている。家の周りには方形に大きく空間を囲っている線が見える。二枚の作品は、他者に触れようと手を伸ばすという点で共通しているが、一方は内側に向かって抱きとるように、他方は外側へ向かって追いかけるように、それぞれの指向性が逆転している。日々暮らしの中で他者との関わり合いを持とうと欲する、いかにも人間的な心の機微がこの二枚の画面の中によく表されている。