デデデデデブリー
Year: 2016
Medium: acrylic, gesso on canvas, mounted on wood ponel
Dimensions: 103 x 72.8 cm (40 1/2 x 28 5/8 in.)
Acquired from Mizuma Art Gallery, 2022
本作は作家の比較的初期作品にあたる。さまざまなジャンルや様式を元にした図像が入り乱れて構成されている。かつて、ポルケやリヒターらドイツ資本主義リアリズムのアーティストたちが実践していた、同時代の表象文化を絵画に取り込む手つきを思い出させる。彼らはベンヤミンの『複製技術時代の芸術』において指摘されている「アウラ」の喪失からの再出発という立ち位置にある。名もなき実昌の作品は、ネットやSNSから膨大なイメージを欲しいままに消費できる時代、つまり「アウラ」という一回性に担保された真正性(神聖性と言い替えても良いだろう)が忘却されつつある時代において、アニメや漫画、ゲームなどのキャラクターイメージ、それらについてのファンアートとしての二次創作や三次創作の同人文化など、貪欲に摂取したイメージを絵画的に分解し再構築している。本作においては、アスキーアートと呼ばれるテキスト記号の組み合わせで作るキャラクター像、作家が目にしたさまざまなアニメやイラストから引用されたものが線描と色彩の要素を丁寧に分解して再構成されている。「RE」というメール返信を意味する記号や、データのドット落ちのような黒塗りの矩形、曲線を8ビットグラフィックを模したようなぎこちない描き方をあえて採用しているなど、インターネット上で既に記号化されているものや、「デジ絵」と呼称されるCGやグラフィック用アプリケーションの特徴を絵画らしく焼き直してもいる。コピーや映像、写真という複製技術の時代から更に進んで、今やイメージは増殖や繁殖にも似た性質を帯びて氾濫する時代にある。名もなき実昌は、その混沌としたイメージの氾濫の中にあるからこそ可能となる絵画を描くのである。
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
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