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untitled
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Year: 2022
Medium: oil, charcoal, plaster, gauze on wood panel, wooden frame
Dimensions: 93.5 x 63 cm (36 7/8 x 24 3/4 in.)
Acquired from Misako & Rosen, 2022
画面全体を覆う深い青が印象的である。おそらく後背に垣間見える赤銅色との差異によってより青の深みを強く感じさせるのだろう。本作が発表された個展「Frame」(2022年, Misako & Rosen)では、同じテーマによって制作された複数の作品と、インスピレーションの源になったであろう彫刻作品とが併置されていた。彫刻は鳥の巣を模していたように思われる。鳥、そして巣という題材は多くの示唆に富み、多くの人はそれだけで空想を大きく広げることができるだろう。ひょっとしたら青は空の色かもしれず、青い羽毛なのかもしれない。西洋絵画的には鳥は愛や恋のアレゴリーで、巣には結婚や家庭の意味もある。しかし、本作がそういった安らぎや情愛を表象しているようには思われない。線描はどうか。羽を伸びやかに広げたような線は翼のようにも見える。金文に見られる漢字の「鳥」の原型にも似通っているように見えるのは偶然だろうか。しかしいずれも、可能性が予感される程度のもので、それ以上先に思考を押し進めることが難しい。杉原の中に一体どういったヴィジョンが生まれ、いかにしてこの青い絵画となって表出したのか、尽きせぬ興味を惹起する作品である。