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ほんの一瞬 / Spilt Second
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Year: 2021
Medium: oil on canvas
Dimensions: 194 x 130.3 cm (76 3/8 x 51 1/4 in.)
Acquired from MAKI Gallery, 2022
本作の題材は作家本人あるいは家族などの過去の写真、おそらくは遊園地のメリーゴーラウンドで遊ぶ姿を写したものだろう。ノイズが入った古いビデオのような画面の中に馬らしき造形とそれに乗る幾人かの人物のシルエットが垣間見える。塔尾はマスキングテープを駆使してマス目一つ一つを描画していく。その過程で絵具がテープに剥ぎ取られたり意図せず生まれてしまった空白が絵を断片化していくのである。隣り合うマス目の塗りが連続性を欠いていることも画像解像度をダウングレードしていったときのような視覚効果を生んでいる。それがいかに大切な記憶であったとしても、いつまでも色濃く心の中に思い返されるとは限らない。塔尾の作品は、この悲しむべき事実を私たちに突きつけてくる。デジタルで記録されたデータであっても同様に、何らかのはずみで断片化したり破損したりする。諸行無常の理は、有形無形問わず共通している。翻って、だからこそ私たちはこの脆い記憶を大切に感じることができるのだということにも気付かされる。