-
Karnevals Auge
-
Year: 2022
Medium: egg tempera, oil on canvas
Dimensions: 120 x 90 cm (47 1/4 x 35 3/8 in.)
Acquired from 104GALERIE, 2022
画面は極めて幾何学的に構成されている。キャンバスを大きく分けた4方の区画はそれぞれ斜めに切り分けられて8面の三角形が描き出されている。色彩は交互に青、白、赤が繰り返されて循環している。ただし、ごくありふれた色面構成的な作品であると断ずるには看破できないディテールの表情が面白い。技法を見ればegg temperaとある。テンペラは卵黄を用いて顔料を溶いて作る画材で描く古典技法で、発色がよく数百年を経ても変色しないという特徴がある。また、油絵具やアクリル絵具とは異なり、広く塗り広げて描くことには向かず、細い線を重ねて陰影や明暗のグラデーションを表現する。本作も、間近に見れば細やかな筆致を丁寧に重ねて描かれている。筆致を目で追えば、青、白、赤の三色が互いに霞むように重なっているのがよく分かる。本来、テンペラ単体ではこのような曖昧な色彩表現は難しく、テンペラの短所を補うために油彩が登場するルネサンス期頃からは油彩とテンペラの混合技法によって描かれることも多かった。本作においてFoxは古典の混合用法を踏襲している。絵画の歴史は画材と技法の開発の歴史でもある。Foxはその歴史に連なることを強く意識していることは明らかで、その作品は数百年の後も今と変わらずこの繊細な色彩を画面に湛えている様を私たちに想像させる。