SABINE MORITZ
ザビーネ・モリッツ
1969年クヴェードリンブルク(DE)生まれ。1994年、デュッセルドルフ美術アカデミーを修了。主にドローイングと油彩画を制作している。初期には花やヘリコプターなど特定のモチーフを描き続ける具象絵画の作家として知られたが、近年は抽象表現に移行しており、基礎的な色彩を重厚に乗せて描かれた画面はとても有機的である。東西ドイツの双方に暮らしたモリッツは、初期の具象絵画の時代から記憶や歴史から作品の着想を得ている。ベルリンの壁崩壊という激動の時代背景を青年期に経験しているモリッツにとっての記憶とは国家の歴史と自分自身と身近な人々の個人史が密接に関わったもののはずである。伴侶であるリヒターは幾分か先行する世代であるが、同じように戦争や悲劇の国家的な頸木を自身の作品の中に通底させている。モリッツの近年の抽象表現では特に赤や青の色彩の象徴性が際立っている。サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)などの国際的インスティチュートや美術館での個展を多数開催している他、家屋を描いた一連の初期作品シリーズはテート(ロンドン)のコレクションになっているなど、世界的な評価が高い。