MATTHEW DAY JACKSON
マシュー・デイ・ジャクソン
マシュー・デイ・ジャクソン
1974年カリフォルニア州パノラマシティ(US)生まれ。1997年ワシントン大学卒業、2001年ニュージャージー州立大学ラトガーズ校のメイソングロス芸術学校修了。非常に多彩なメディアを扱う作家であり、彫刻、絵画、写真、パフォーマンス、インスタレーション、写真と多岐にわたる作品を制作、発表している。作品のテーマとして取り上げられるものも同様に多彩であり、アメリカの大衆的な文化、ありふれたイメージ、歴史、自然史、技術、神話など、さまざまな要素からインスピレーションを得ている。美しさと同時に恐怖を喚起する「Horriful」をコンセプトとしているため、作品はどこかディストピア的な気配を感じさせる。世界各地の主要美術館での展覧会出展が続く。メトロポリタン美術館(NY)、ルベル美術館(マイアミ)、ブラントン美術館(テキサス)、ホイットニー美術館(NY)などの美術館が作品を所蔵する。ドラッグ・レースのライセンスを保有するレーシング・ドライバーとしても知られる。
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Title: WHJ Waterfall
Year: 2022
Medium: wood, oil paint, epoxy, acrylic paint, urethane plastic, lead, geode, stainless steel frame
Dimensions: 184.2 x 148 x 5.1 cm (72 1/2 x 58 1/4 x 2 in.) -
Title: September 8,1958
Year: 2012
Medium: carpet, formica, astroturf, screenprint on plywood, OSB, resin, cast on panel and stainless steel frame
Dimensions: 217 x 167.5 cm (85 1/2 x 66 in.)
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WHJ Waterfall
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Year: 2022この作家の作品は、まるで特定のスタイルというものが存在しないか如く、発表ごとにまるで異なる形式、異なるコンセプトを変幻自在に操る。本作ではステンレスの硬質なフレームに滝の景色が造形されているが、間近で細部を見た時にその物質的な異様さに圧倒されることだろう。絵具のように見える画面は、鉛であり、瑪瑙であり、多種多様な素材を造形し、精巧なパズルのように組み合せて景色が作られている。意味深に思えるタイトルは暗号ではない。WHJとはアメリカ西部の風景写真家として名高いWilliam Henry Jackson(1843-1942)のイニシャルであると推察できる。本作の構図はヘンリー・ジャクソンがイエローストーン国立公園で撮影した滝の写真の一枚と構図が正確に重なるからである。デイ・ジャクソンは2022年の一部の作品において、過去のアーティストが残した名作からの引用を試みている。しかし、本作にも見られる通り、素直にオリジナルをなぞるのではなく、色彩や使用する素材の際立った異様さによって、元の作品から引き継いだものをまるで逆転させるかのようである。作家が常々「Horrible」と述べているように、かつてヘンリー・ジャクソンが心を奪われたであろう雄大な自然の崇高さを残していながら、それを重苦しい鉛で暴力的に覆い尽くすような、本作の緊迫した表現に全身が粟立つのを覚える。
Medium: wood, oil paint, epoxy, acrylic paint, urethane plastic, lead, geode, stainless steel frame
Dimensions: 184.2 x 148 x 5.1 cm (72 1/2 x 58 1/4 x 2 in.)
Acquired from Pace Gallery, 2022
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September 8,1958
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Year: 2012ジャクソンは雑誌『Life』の表紙が象徴するアメリカの近現代史について目を向けたシリーズを制作している。タイトルにある通り本作では1958年9月8日に刊行されたものを題材としている。その表紙にはガラパゴス諸島を特集する内容の題字と、ガラパゴスゾウガメとベニタイランチョウのイラストが描かれている。ガラパゴスゾウガメとベニタイランチョウは、いずれもダーウィンにゆかりのある生物だ。『種の起源』は1859年だが、この号が発売されるまでの100年間、進化というテーマに対する議論は重ねられ時に宗教や倫理の観点から多くの軋轢も生じた。1958年当時は、アメリカではまだ州によっては反進化論法が州法に定められていた時代だ。
Medium: carpet, formica, astroturf, screenprint on plywood, OSB, resin, cast on panel and stainless steel frame
Dimensions: 217 x 167.5 cm (85 1/2 x 66 in.)
Acquired from Sotheby’s, 2023
ジャクソンの作品はオリジナルをほぼ忠実になぞっているが、人工芝風のカーペットや内装用の化粧パネルなど様々な素材を使った象嵌のように表現されている。本来は一目で『Life』誌であることを購買者に訴求する特徴的な赤いデザインが本作では表現されていない。また、兵士などが身につける認識標を逆向きにしたようなものが作品左方下部に加えられており、素材の選択ゆえか明るく軽やかな作品全体の印象と対比的な暗さと重さがある。これの意味するものは何だろうか。
Courtesy of Sotheby's