TELEXISTENCE
Year: 2011
Medium: Epoxy resin, acrylic, spray, glass and plastic
Dimensions: 16.3 x 15 x 21 cm (6 3/8 x 5 7/8 x 8 1/4 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2023
オパールのような虹色のフレークによって造形された髑髏の彫刻。大胆なブラッシュ・ストロークそのものを絵画として提示する山口歴の、比較的活動初期の彫刻作品となる。2010年代前半の山口は、具象的なイメージを描くには強すぎるほどのストロークと激しい色彩とを組み合わせて描く絵画を制作していた。特に、SNSなどに流れてくる友人たちの肖像を同様のスタイルで描いたシリーズでは人の顔としての造形を無視したような色の奔流でありながらも、モデルの豊かな表情を見事に捉えている。本作は、そうした初期肖像画のシリーズの流れを理解して見るべきだろう。印象派などに影響を受けて絵画を志した山口がそれを意識しないはずはないが、ヴァニタスにしてもメメント・モリにしても、死すべき運命に避け難く晒されている人間という存在を表象するのが西洋絵画における髑髏である。本作のタイトル「TELEXISTENCE」は、ロボット工学で遠隔操作を意味する造語で、遠隔地にある対象に作用する機器に対して、VRなどの感覚拡張技術を応用して操作者である人間の身体感覚を連動させる技術を指す。拡大解釈をするならば、人間が肉体を離れて実存しうるSFのような可能性も視野に入ってくる。人の生とは、死とは、そこに紐づいているはずの人間の尊厳とは、どこへ向かうのだろうか。山口の髑髏は、私たち人類の新たな生と死のありようを表象しようというのだ。
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