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An Immeasurable Rift
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Year: 2023
Medium: oil on canvas
Dimensions: 255 x 130 cm (100 3/8 x 51 1/8 in.)
Acquired from Ronchini Gallery, 2023
縦に長い構図は、この絵画に描かれた太陽と海の景色をそのままのスケールごと空間に持ち込んで来る。オレンジ色の日の光が、はるか遠い水平線の向こうからすぐ足元の波打ち際まで長く伸びている。「An Immeasurable Rift」とは、この長大な光の帯が大気と海を切り裂く様子を表しているのだろう。オレンジ色から次第に紫、藍色、青、水色へと変じていく緩やかなグラデーションが画面上における空間の広大さを増幅して見せている。波の動きに合わせるように、複雑な捻れのある形象が光の左右に広がっている。ラズの絵画ではたびたびこうした幾何学的図形が風景の自然な描写と混ざり合うようにして描かれる。例えばモンドリアンがリンゴの木を抽象化していく過程で描いた絵画群のように、何かを表象する際においてその対象物の形象が捨象されていく最中の曖昧で中間的な領域がある。本作ではそうしたラズのイメージと絵画の関係性に対する態度がはっきりと現れている。また、作品の最も下方、絵画空間においては最も手前には波に同化するようにして描かれた人物を見つけることができる。彼はまるで西風の神ゼフィロスのように、大きく頬を膨らませ窄めた口から息を吹き出している。ここに目を向けると、この絵画は途端に現実から遊離して、空想や寓話の世界に近接する。押し寄せる波型の図形はあるいは雲海となって、海景と思われた絵画は天上の風景との二重性を示し始める。