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Untitled
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Year: 2022
Medium: FRP
Dimensions: 48.5 x 21 x 24.2 cm (19 x 8 1/4 x 9 1/2 in.)
Acquired from TAV gallery, 2022
菅原はこれまでも人体彫刻を多く制作しているが、それらは一様にモノトーン(特にグレー)の色であったり、あるいはデジタイズされた造形に主眼が置かれていた。本作では一転して頭像を青いメタルカラーで制作している。そして、特徴的なのは頭像でありながらまるで目も口もない覆面でも被っているかのような無表情に作られている点である。しかも、これまでのグレーの作品と大きく異なっているのは、僅かながら素材の凹凸が残されているところにも見られる。それは菅原が一貫してきたように、触覚を目で知覚させるという点においては原型を作る素材としての粘土らしさが際立たされている。これは今眼前にある作品の実際の素材がFRPであることを前提とするならば、この粘土らしさとは偽りの質感であること露骨に表している。彫刻というものが、絵画と同じように現実の何かを映し出すためのいわば鏡であるとするならば、それは常に偽りの表層(Illusion)に頼らざるを得ないのである。覆面=秘匿性というものが現代の情報化社会を象徴しているとすれば、この偽りの表層によってその意義は本作の内側にこそ被覆されていると言えるだろう。この見えざる内側さえも知覚させようというのが菅原が制作の基本コンセプトとして掲げる「触覚性」の本質でもあるだろう。