Year: 2022
Medium: silver nitrate, reclaimed charred redwood
Dimensions: 30.5 x 30.5 x 30.5cm (12 x 12 x 12 in.)
Acquired from MAKI Gallery, 2022
日本では杉材を建築に用いるが、西日本では耐久性を高める目的で焼杉という技術を用いることがある。杉板の表面を焼くことで炭素化させる。炭素は非常に安定した物質であることからわかるように、炭化した表面を保つ焼杉は耐候性に優れ、経年による劣化速度を遅延させる。アンドウは2019年にアジア・ソサイエティ・テキサス・センターの展示で「Ryōanji」という作品を発表している。龍安寺の有名な枯山水を模した園庭様のインスタレーションである。「Shou Sugi Ban」のシリーズはそのインスタレーション作品で石に変わって配された。本作は、黒く焼いた杉のブロック材に硝酸銀による銀鏡反応を応用した塗装が作品上部に施されている。銀色の上部は白く明るい光を反射させているのに対して下方の焼杉は光を吸収するように深い影を作っている。わずか30cm四方の立方体の中に、明暗のあまりに違う両者が違和感なく同居し、対立を示唆しない。「Form is Emptiness, Emptiness is Form」とは先述の2019年の展示タイトルであるが、般若心経の「色即是空、空即是色」を意味する。形あるものは形なきものと同じ。虚実を表裏一体と見做す禅の精神を引用している。